蝶が舞う庭
ハーブや花々を仲人にして蝶との生活を楽しみましょう。 幼虫から育てて楽しむコーナーと、イモムシは苦手という人のために 成虫だけを呼ぶテクニックをご紹介します。
チョウは完全変態を行なう昆虫として有名。卵、幼虫、さなぎ、成虫というサイクルをその一生としています。この中で、食物を摂取するのが、幼虫期と成虫期。しかしこの二つの時期では食べ物も、口の構造もまったく違います。そしゃく口を持ち、噛むことができた幼虫は、親になるとあのぜんまい形の口吻を伸ばすことで、花の蜜や樹液だけを吸って生きていくのです。ですから庭に何を植えるかで、チョウの親と子、どちらを呼ぶかが選べるというわけなのです。
ベランダでも チョウチョが呼べる、ご近所の生態調査
一口に蝶といっても「台湾から滋賀県まで1800キロ、チョウ飛来」というタイトルで2000.08.14の新聞をにぎわせたアサギマダラから、裏庭をよたよた飛んでいるスジグロシロチョウ、かとおもえばクロアゲハやカラスアゲハのように林の縁を伝いながら、ひがな周遊コースを散策している者、山頂まで出かけて群れ遊んでいるキアゲハの雄たちと、実に様々。ですから、まずはあなたの住んでいる町でどんな蝶たちに出会えるか、お散歩や買い物ついでに調べてみることをおすすめします。庭やベランダになにを植えるのかを決めるのは、それがわかってからのお楽しみ。
チョウなどを呼び寄せるバタフライガーデンはアメリカなどで盛んです。
花の蜜で呼び寄せる方法と、産卵のための植物(食草)で呼び寄せる方法をセットで植えます。
チョウだけ呼びたいけれど、イモムシはどうも苦手という方は「食草」にあたる植物だけを注意深く庭から排除してみてください。ただし、ここで紹介しているのはチョウの幼虫のための物だけなので、ガの幼虫については責任が持てません、あしからず。
「イモムシはいやっっ!」という方は
庭に植える植物を、できるだけ多種少数の組み合わせにするよう心がけるとともに、小鳥のための巣箱や水飲み台などを置いて、イモムシやケムシを食べてもらうようにしましょう。庭の生態系が複雑に安定するほど、1種類の害虫だけが異常発生することは減っていきます。
花で呼ぶ?
成虫の好む花は種類によって色々ですが、幼虫のころの食べ物の好き嫌いの激しさに比べたら、問題にならないほど種々雑多な花に訪れます。
それでもやっぱり、大型のチョウはユリやアザレア、サルビアといった大型の花や筒型の花に多くが集まり、小さな花のペパーミントや皿形のカモミールなどには小型のシジミチョウやモンシロチョウがやって来るようです。実はこれは、花が訪花昆虫を選んでいるためだともいわれています。チョウのくちばしの長さも体の大きさでかなり違うので、蜜を吸える花がある程度決まってしまうのです。
蜜源一覧表
*は都市部でもよく見られる種
昆虫種名 | 野生種 蜜源 | 園芸種 蜜源 | 備考 |
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ルリシジミ* | 小さい花、皿形の花ハルジオン、タンポポなど | 小さい花、皿形の花、マリーゴールド、アゲラタム、デージー、 アスチルベなど各種の花 |
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ヤマトシジミ* | 小さい花、皿形の花ハルジオン、タンポポなど | 小さい花、皿形の花、マリーゴールド、アゲラタム、デージー、 アスチルベなど各種の花 |
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ツバメシジミ* | 小さい花、皿形の花ハルジオン、タンポポなど | 小さい花、皿形の花、マリーゴールド、アゲラタム、デージー、 アスチルベなど各種の花 |
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ベニシジミ* | 小さい花、皿形の花ハルジオン、タンポポなど | 小さい花、皿形の花、マリーゴールド、アゲラタム、デージー、 アスチルベなど各種の花 |
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ミドリシジミ | 各種の花、クヌギなどの樹液 | 小さい花、皿形の花、アゲラタム、アスチルベなど クヌキ、コナラの樹液 | 都会では呼びにくい |
ヒオドシチョウ | シダレヤナギ、ネコヤナギ ウツギの花や クヌギなどの樹液 |
ウツギ、バイカウツギ、クヌキ、コナラの樹液 | |
アカタテハ | 各種の花や腐った果実 | 中型の花、皿形の花、ヒャクニチソウ、アザミ、フジバカマなど | |
ヒメアカタテハ | 中型の花、皿形の花 | 中型の花、皿形の花、ヒャクニチソウ、アザミ、フジバカマなど | |
オオチャバネセセリ* | アザミやオカトラノオなど各種の花 | 中型の花、皿形の花 ヒャクニチソウ、アザミ、フジバカマ、 アリウム、サルビア類など |
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キアゲハ* | 赤い大きい花などユリ、ツツジ、ヒガンバナ、ヤブガラシなど | 中型の花、皿形の花 ユリ、ツツジ、シャクナゲ、カサブランカ、ブッドウレア 、リコリス、コスモスなど |
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ナミアゲハ* | 赤い大きい花 などユリ、ツツジ、シャクナゲ、ヒガンバナ、 クサギ、ヤブガラシ |
赤い大きい花 カサブランカ、ブッドウレア、リコリス、コスモスなど |
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クロアゲハ* | 赤い大きい花 などユリ、ツツジ、シャクナゲ、ヒガンバナ、 クサギ、ヤブガラシ |
カサブランカ、ブッドウレア、ア、リコリス、コスモスなど | |
アオスジアゲハ* | 白い小さい木の花、ヤブガラシ、ミズキ、イボタノキ、ネズミモチ、シャリンバイ シャリンバイなど | 白い小さい木の花ミズキ、イボタノキ、ネズミモチ、シャリンバイ など | 白い小さい木の花 草の花にはほとんど来ない |
カラスアゲハ | 各種の花、特にツツジ、アザミ、ヤブガラシ | カサブランカ、ブッドウレア、ア、リコリス、コスモスなど | |
スジグロシロチョウ* | 小さい花、皿形の花 | 小さい花、皿形の花、アゲラタム、アスチルベ、 マリーゴールド、ブルーサルビア、キバナコスモスなど |
黄や紫の花、赤にもくる |
モンシロチョウ* | 小さい花、皿形の花 | 小さい花、皿形の花、アゲラタム、アスチルベ、ビオラ、ブッドウレア、ラベンダー、 マリーゴールド、ブルーサルビア、キバナコスモス |
黄や紫の花、赤にはほとんどこない |
モンキチョウ* | 各種の花、特にアザミ | 小さい花、皿形の花、アゲラタム、アスチルベ、ビオラ、ブッドウレア、 ラベンダーなど |
食草一覧表
イモムシから育てて、我が家ブランドのチョウたちを巣立たせてみたい方は、ぜひ食草を植えてみてください。これは、場合によっては花でチョウを呼び寄せるときよりもはるかに確実に呼べます。卵を産める植物のある場所は、住宅地などでは極端に限られるので、チョウの方も必死で探すからなのです。ですから、一度見つけた場所は忘れずに何回もやって来ては卵を産みつけます。
そのうえ、 幼虫たちの食欲はものすごい。小さめのミカンの木なら、たった数匹であっという間に葉を食べつくしてしまいます。イモムシが多すぎるようなら、ご近所さんやお友達にお裾分けしましょう。野生の食草が生えているところを、前もって調べておくのも一つの方法です。それはハーブ類に関しても同じこと。人間の食材用としても育てたいなら別 の鉢や場所を確保します。
確かに、とっても効率の悪いことを言っているのは承知しているのです。イギリスの民話や童話には「半分は、妖精のためにとっておく」という言い回しがときどき出てきます。これは、日本とは比べ物にならないほど、貧相な生態系の多様性しか残されていない場所で、何とか生き延びてきた人たちの知恵とも考えられます。日本の山菜取りの人たちが「半分は来年のために残しておく」と言うのとを比べてみると、何となく配慮の質が違うように思えてきます。自分だけのためや生産効率ばかりを追い求めるうちに、何かもっと大切な物を失ってきたのは、僕たち自身だったのではなかったでしょうか?
蜜源一覧表
*は都市部でもよく見られる種
昆虫種名 | 野生種 食草 | 園芸種 食草 | 備考 |
---|---|---|---|
ルリシジミ* | マメ科のフジ類やハギ類、、バラ科、ブナ科、ミカン科、ミズキ科、タデ科などの花や若葉 | ストロベリーキャンドル、フジ、ハギなど | |
ヤマトシジミ* | カタバミ科 カタバミなど | オキザリス?(未確認) など | 芝生のカタバミを食べ増加幼虫時代にアリとの共生関係を持つ |
ツバメシジミ* | シロツメクサ、コマツナギ、メドハギ、ミヤコグサなどの花 | ストロベリーキャンドル、エンドウ、ダイズ、 フジ、ハギ、ミヤコグサなど |
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ベニシジミ* | タデ科 スイバ、ヒメスイバ、ギシギシ、ノダイオウ | ソレル、ルバーブなど | |
ミドリシジミ | カバノキ科ハンノキ、ヤマハンノキなど | ハンノキ、ヤマハンノキなど | |
ヒオドシチョウ | ニレ科エノキ、ハルニレ、ヤナギ科ヤナギなど | エノキ、ハルニレ、ヤナギなど | |
アカタテハ | ニレ科ケヤキ、ハルニレ、イラクサ科カラムシ、ヤブマオなど | ケヤキ、ハルニレ、ネットル、など | |
ヒメアカタテハ | キク科 ヨモギ、 タンポポなど | ヤグルマギク、アザミ、ゴボウ、ダイズなど | |
オオチャバネセセリ* | イネ科 ススキ、チガヤ、エノコログサ、アシ、ササ、タケなど | リボングラス、ヤバネススキ、シマススキなど | |
キアゲハ* | セリ科 シシウド、ミツバなど | ニンジン、パセリ、セロリ、フェンネル、アンジェリカ、 レースフラワーなど |
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ナミアゲハ* | ミカン科 サンショウ、カラタチなど | レモン、ユズ、ダイダイ、キンカン、ミカン、ルーなど | |
クロアゲハ* | ミカン科 サンショウ、コクサギなど | レモン、ユズ、ダイダイ、キンカン、ミカン、ルーなど | |
アオスジアゲハ* | クスノキ科 クスノキ、シロダモ、クロモジ、ヤブニッケイなど | ゲッケイジュ、ニッケイなど | 街路樹のクスノキを食べ増加 |
カラスアゲハ | ミカン科 キハダ、カラスザンショウなど | レモン、ユズ、ダイダイ、キンカン、ミカン、ルーなど | |
スジグロシロチョウ* | アブラナ科 ナズナ、イヌガラシ、タネツケバナなど | ナスタチューム、ダイコン、クレソン、ストック、 ウォールフラワー、 スイートアリッサムなど |
ビル影を好み増加 |
モンシロチョウ* | アブラナ科アブラナなど | アブラナ科キャベツ、ルッコラ、ブロッコリー、ハボタン、など | 元々栽培植物を好む |
モンキチョウ* | マメ科 シロツメクサ、スズメノエンドウなど | ストロベリーキャンドルなど | 芝生のシロツメクサを食べ増加 |
蝶の庭のポイント
1.近所で見かける呼びたい生き物をきめる (呼びたくない生き物も)
2.場所をきめる
- 日向なら、ほとんどの果樹、蜜の多い花木や花壇用草花、野菜、ハーブ類の組み合わせが可能
- 日陰では、日陰が好きな植物や日陰でもたえられる植物に限られる(斑入りの植物を多用すると明るい印象に)
3.ガーデンスタイルをきめる
- キッチンガーデン風なら 果樹、野菜、ハーブ類を中心にまとめる
- ナチュラルスタイルなら ボーダーガーデンの手法を参考に (手前にも少し、背の高い植物をうえると自然な感じに)宿根草などを上手に組み合わせる。
- その他、和風、コンテナなど好みにあわせて植物を選ぶ
4.管理法

蝶の庭 生命のゆりかご展
東京ガス銀座ポケットパーク
’97/5/22~6/24から。ナツミカン、ゲッケイジュ、クチナシ、
ヤマユリ、ラベンダー、レモンバーム、
ナスタチューム、アゲラタム、
ブルーサルビア、マリーゴールド、
セロリ、パセリ、ブロッコリー、
キャベツ、バジル、カレンソウなど
- のんびり待つ
- 花がら摘み、剪定などは最小限にとどめる
草取りも程々に(小鳥や虫たちが利用するため) - いも虫など1種類だけ殖え過ぎたらお裾分けする
(小学生のいるご近所に観察日記などを薦めれば、何とかなる?) - 半分は生き物たちの物と割り切るか、人間用は別のところに置く
まち水で呼ぶ

幼虫がすみ慣れた食草を離れて
姿が見えなくなったら、 さなぎになる
ための移動を開始したのかも知れま
せん。 雨が当たらない鳥の目に
つきにくい場所を探してみましょう。
幼虫からビロードのような翅を持つ
チョウへと羽化する瞬間に出会えるかも
夏の午後、庭先に水をまいて、涼しくなったらお昼寝。と、思ったら水たまりにチョウが。なんて言う経験はお持ちですか?
アオスジアゲハは白っぽい木の花やヤブガラシの蜜が好きなので、花壇にはなかなか降りてきてくれません。でも、暑くてよく晴れた日には水溜まりにやってきて、アゲハチョウたちと一生懸命吸っている様子を見ることができます。もし池があるのなら、泥の露出したなだらかな岸辺を作るのもよいでしょう。
樹液で呼ぶ
ゴマダラチョウやヒオドシチョウ、キタテハ、ジャノメチョウなどは、花よりもクヌギやコナラ、ヤナギなどの樹液や、腐った果 実の汁を好みます。