みんなでつくる理想のビオトープ・ガーデン

ビオトープ場合は、食事や休息、隠れ家、繁殖地など、全ての機能を兼ね備えていなければなりませんが、ベランダなどではそれは最初から無理な相談です。むしろ「私は蝶が好き」、「子供に見せたいから、イモムシも」、「わが家に小鳥を呼びたい」、「トンボのいる庭がいいな」なんて、みんながわがままを言ってそれぞれが理想のビオトープ・ガーデンを創った方が、マンションや町全体のレベルでは、すべてのビオトープ機能を持つことになるのです。

ビオトープ・ガーデンは、簡単にいってしまえば、20世紀まで行われてきた何でも集めて来て造る庭ではなくて、野性の動植物が自然に集まってくる、まったく新しいタイプの庭なのです。ですから、自然破壊の進んだ都会に創られる場合と豊かな自然がまだ残されている田舎に創られる場合では、全く違ったものになってきます。ただ、共通 して言えるのは、「手に入りにくい野性の動植物は使わない」ということです。
ビオトープは本来、野鳥や虫たちだけのものではなく、野性の植物をはじめとした、いろんな生き物たちの住み家なのです。だから、もともとその地域に生えていた野性の植物を植えるのが一番なのですが、都市部では特に、近くの林や河原から根こそぎ持ってきてしまっては、かえって自然破壊を進めてしまいます。

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そこで、野性の植物とおなじ役目の園芸植物を庭に植えることで、人にも生き物達にもやさしい庭を造っていこうと考えています。たとえば、林縁のクサイチゴやナワシロイチゴのかわりにブラックベリーやラズベリーを植えれば、ジャムを作ることもできます。逆に、自然の多く残された郊外や里山を利用した施設、スキー場などでは、ギボウシやヤマユリ、ヒヨドリバナ、キョウガノコ、ツリガネニンジン、それにフユイチゴやテイカカズラなどといった、少し前まではどこにでも見られた美しい日本の野生植物を積極的に増殖させ取り入れて行くことで、周囲の環境回復の足がかりにもなるというわけなのです。 ただし、この場合、残された自然を撹乱しないように 細心の注意を要します。詳しくは、ビオトープ・ガーデン田舎編をお楽しみに。

あなたの庭やベランダに、蜜の多い草花とささやかな水飲み場を。もうそれだけでも、立派なビオトープ・ガーデンです。小鳥たちが遊びに来るようになると、糞から実のなる木が芽を出し始めます。お気に入りを大事に育てれば、窓辺の自然ももっと豊かになるはず。庭の手入れもほどほどに、かすかな自然の気配が楽しめるようになったら、巣箱や餌台、それに蜻蛉のための睡蓮鉢も置いてみましょう。思わぬ お客様が立ち寄ってくださるかもしれません。