もっと増やしたい 公共住宅の中の ビオトープ

この団地ができるきっかけもまた、住民による、自然保護の運動でした。 住民の要請を受け世田谷区が提示したのが環境共生住宅という、耳慣れないものでした。建物の随所に、エコハウス的な機能を持たせ、住民がくつろぐための庭『ビオトープ』も計画され平成六年に完成しました。
このみんなの庭には様々な生物がやってきて、訪れる人の心をなごませます。しかし、問題点は管理のこと。あらゆる世代が住むので、共通 の自然保護認識を持ってもらうのが大変です。
建物の脇に据え付けられたコンポスト製造のための装置もずいぶん前から使用禁止のまま。小石とコンクリートで固められた池にはコウホネやガマこそ植えられてはいても、緋鯉が放され、ボウフラも繁殖し放題。随所に様々な園芸植物が植えられており、初めてここを訪れた人は、入り口の説明を読まなければビオトープが作られていることさえ気がつかないでしょう。住民にインタビューしてみると、やはり蚊に悩まされているとのこと。住宅地でビオトープを維持することの困難さを痛感させられます。僕個人としては、この際ビオトープ・ガーデン的管理を取り入れることをお勧めしたいところですね。

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深沢環境共生住宅

この団地には様々なエコプロジェクトが組み込まれています。屋上緑化や壁面 の緑のスクリーンなどの設置、風の吹き抜けやすい構造などのくふうで、室内の温度を安定したものにしています。ビオトープにはせせらぎを造り井戸水を利用し、風力エネルギーを使って池に流しています。中庭の入り口は小高くなって、背の高い植え込みが外界からの排気ガスや騒音を効果 的に遮断しています。

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西側の壁面に取り付けられたフェンスには、アケビやフジ、羽衣ジャスミンなどが絡まっている。落葉性のものを植えれば冬暖かく、夏涼しい。あと何年かで、冷暖房費も10%程度は抑えられそう。
 花や実は人々を楽しませるだけでなく、小鳥や昆虫たちにも利用される

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コンクリートで固められた池には、表面のざらざらした小石が敷き詰められている。表面 に微生物が増殖しやすく、水質の浄化に役立つ。肥料分も少ないので、夏場にアオコが増殖することも防げる。
 水辺に低く配された石組みは、小鳥の水飲み場や、カエルやカルガモたちの移動に使われる。ほんとは、もっと石ころが顔を出している浅瀬もあれば、小鳥たちの水浴び場になるのにね。この深さは、カラスの行水にはちょうどいいね。
残念なことに、池の中にはボウフラを食べてくれるような小魚がいなかった。おかげで住人たちはカに悩まされていたけれど、ヒゴイやアメリカザリガニみたいに悪食な生物を入れるのをやめて、ヒメダカなんぞを放し、お掃除役のタニシやヌマエビも放すと好いのになあと、本当に思うのだ。 欲を言えば、産卵場所兼隠れ家としてクロモやマツモなんかも植えて欲しいよねえ

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風力発電やソーラパネルの屋根は、いかにも近未来的。
ある人の計算によれば、僕たちが生活に使っている電力や、ガス、ガソリンなどのエネルギー消費活動を、動物一頭分の食生活に換算してみると、なんと、人間一人分はゾウ一頭分に等しいのだと。これじゃあ、生物ピラミッドのバランスなんて成り立つわけがない!
町中に孤立する風車を見上げていると、なんだか、ゾウにダイエットを薦めてるような 妙な気分になってくるけれど、こんなささやかなところからでも、とにかく始めないことには、 どうにもならないところまで来ちゃってるんだよね、僕たちは

yane
おなじみ、屋上緑化。ムクドリやスズメは遊びに来てるかな?もっと色々生えてたらおもしろいのに。その方が、もっと生態的な利用価値も上がるような気がする。下の棚はキウイフルーツ用。たわわになれば、小鳥も喜ぶ

kadan

ブルーサルビアの蜜をすうモンシロチョウ。園芸作物と帰化生物の供宴だ。
ビオトープエリアには住人たちの植えた様々な園芸植物が花盛りだ。人の生活するエリアなのだから、当然こうなる。花が咲けば蝶がくる。木の実がなれば鳥もくる。良いじゃないか。ここは無自覚に生まれたビオトープ・ガーデンだ。
地方でよく見かける、放置され、帰化植物に圧倒されたビオトープ(だった場所)なんかより、よっぽど好い

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斑入りのギボウシの植え込みは、日陰の庭を華やかに彩 る。イングリッシュガーデンが流行して注目を集めたギボウシだが、元々は日本のもの。林の縁を周遊するカラスアゲハやクロアゲハが訪れる。
ブロックが木の杭というのもポイントが高い。しかし、規格品の一律の美しさは前世紀の遺物。木の種類や高さも色々にすればキノコや甲虫にも優しい花壇になる。
石畳は多孔質のブロックを使用。 雨水を吸収して地面 の温度を下げる。夏のつらい照り返しを和らげるだけでなく、徹底的に使えば、都市の温暖化の歯止めにもなる

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階段の下にはヤブコウジの植え込みが。森林性の植物なので、元々日陰に強い。冬には赤い実を付け小鳥たちの餌を提供する。
様々な種類のグランドカバープランツを利用することで、猫が糞をするのを防ぐだけでなく、雑草の防除も簡単にする

fukinuke
吹き抜けにも植え込みが。至る所風の道が造られている。吉田兼好の教えに忠実に?夏向きの家である。 ただ、北風を遮る植え込みがまだ小さいので、冬はつらそうだ。雨の落ちる通 路には、ヒイラギナンテンがたわわに実を付けていた。メジロやヒヨドリが喜びそうだね