すでにガーデニングを楽しんでいる人たちのための、上級者編。イングリッシュガーデンの魅力は、なんといってもナチュラルスタイル。ビオトープ・ガーデンにはぴったりです。落ち葉や鳥たちの糞からでた木の芽も大切に。生態学的にみても、よりいっそうバランスのとれた庭を作ることができる、上級者向けの庭です。
庭の手入れが面 倒というか、あまり手をかけたくない人は、宿根草や球根植物を中心に上手に組み合わせると、毎年季節ごとに様々な花を楽しむことが出来ます。ただしプランニングは綿密に。庭仕事が好きで、つい色々と植えたくなってしまう人は、1年草の花壇のエリアをとっておくと良いでしょう。手入れのしすぎは禁物です。せっかく来た小鳥たちも落ちつけなくて、巣箱を利用してくれなくなってしまうかも知れません。
イングリッシュガーデンとは言っても、なんと日本の植物が多く使われていることか。あるガーデニング雑誌の表紙を飾っていた水辺の庭を見せて、90%の植物が日本のものだって学生たちにばらしたら、ホントに驚いてたっけね。要は、使い方って訳です。イギリスやフランスの映画で野外シーンになると目に付くのがヤツデ、それにギボウシ。日本の植物を上手に組み合わせれば手間いらずのイングリッシュガーデンも可能だ。
手入れの行き届き過ぎたコナラ林。
生き物たちには棲みにくいが、ヨーロッパの植生に似ていないこともない。
10X10mの正方形を林の中に取って構成種数を比べて見ると、
日本の場合程良く管理されたコナラ薪炭林では
50種を超える植物が確認されるのも珍しくないのに対して、
ヨーロッパでは一桁下に収まってしまうことが普通だ。
一度滅ぼしてしまったものは元には戻らない。
ナチュラルスタイル、つまり自然な感じのする庭を創ればよいのですが、どんなポイントがあるのでしょうか。ついでに自然林と人工林の構造の違いをお勉強してみましょう、ビオトープ・ガーデンの仕組みがより深く理解でき、あなた流のアイデアも生まれてくるはずです。
人工林が主に単層構造、つまり高木層しかないことも多いのに対して、自然の状態に近い森は、3~4重の層構造になっています。高い方から順に高木層、中木層、低木層、草本層、ときにはコケの層も。構成種の数も桁が違います。ナチュラルスタイルのポイントをちょっとまとめてみましょう。
- 多層構造の植え込みにする
- 植物の植え方を均一にしない
- 多種少数の種構成にする
- 所々、手前に背の高い植物を植えて奥行き感をだす
- 剪定は、ほどほどに
- 多少の雑草も景色のうち
- 植え込みの縁に常緑性のグランドカヴァーなどで落ち葉止めを
3層構造のコナラ林。
かつては人の手がかなり入っていたため、
回復途中の林に生育する植物の種類はかなり偏って、失われて
しまった種も目立つ。ぱっと見た感じは日本庭園風の眺めだ。
では、ミヤコザサの代わりに四季折々の花の咲く草むらと
いろんな実が楽しめる低木の茂みとの組み合わせだったら?
ほら、何となくナチュラルスタイルでしょ?
1.多層構造の植え込みにする
少なくとも1ヶ所ぐらいは、高木層、低木層、草本層の3層がそろっている場所があると理想的です。もちろん、草本層だけの場所があってもかまわないのですが、高木層だけというのは避けたいものです。
むき出しの地面を鳥たちの砂浴び場として残したいのであれば、猫に襲われないようになるべく見通 しのきくところを選びましょう。常緑樹の下や軒下の乾いたところなら、アリジゴクの巣も。目的もなく、ただ裸の地面 がむき出しになっているのは、見た目にも寒々しく、砂埃や、軒先の雨の跳ね返りで家の壁が汚れたり、猫のトイレになったり、その上草取りも大変とさんざんです。もし樹や草のない場所を作りたいのであれば、その広さにもよりますが1~5cm程度のざら石を混ぜてまくのがおすすめです。日当たりが良ければタイムなどの背の低い植物を所々に配しておけば、よりナチュラル感が。こういった荒れ地風の場所が好きな、カワラバッタなどが住み着くかも知れません。
どちらかと言えばワイルドスタイル。
そう言った方がよいかもしれませんね。手前左に
あるのはマルハナバチやオオフタオビドロバチの
巣作りための装置。節を抜いた直径1~2cmの
竹を束ねて、雨除けの下に横たえるだけだ。
かれらはとてもおとなしく働き者。せっせと花粉を
運んでくれるので庭での収穫量も上がります。しんきんVISA
はれ予報特集「ビオトープ・ガーデンのすすめ」
2000/3から
2.植物の植え方を均一にしない
限られた空間に多様な環境をモザイク状に組み合わせるのが、いろんな生物を呼び寄せる秘訣です。でも、やりすぎは禁物。全体がごちゃごちゃした印象にならないよう、メリハリをつけるのを忘れずに。すっきりした空間と入り組んだ場所を組み合わせることも、多様な環境を作るポイントです。
3.多種少数の種構成にする
日本の場合、程良く管理されたコナラ薪炭林では50種を超える植物が確認されるのも珍しくありません。豊かな自然にあこがれて造られたナチュラルスタイルの庭には、人工的な匂いのする毛氈花壇のように一種類をまとめてたくさん植えるのではなく、いろいろな植物を上手に組み合わせて創った自然な風情の草むらが似合います。
4.所々、手前に背の高い植物を植えて奥行き感をだす
イングリッシュガーデンのテクニックを応用しましょう。通路脇のボーダー花壇のように奥行きのない場所でも、効果 的に深々とした草むらの雰囲気を演出でき、落ち着いた、それでいて発見に満ちたエリアを創ることが出来ます。道路に面 した建物沿いの細長い敷地では、雑踏を遮断する目隠し効果にもなり、小鳥やその他の小動物を脅かさずにすみます。
5.剪定は、ほどほどに
枝先を刈りそろえるのではなく、余分な枝をさばいたり、切り戻したりして、自然樹形に近づけます。枝の伸びかたを棚型や皿形の場所が出来るように工夫すると、巣箱を利用しないで自分で巣を作るヒヨドリやキジバト、オナガなどの子育てを見られるかも知れません。
6.多少の雑草も景色のうち
エノコログサやイヌビエ、コバンソウといった雑草の種は、野鳥たちの大事な食料になります。目の仇にしてひっきりなしに草取りをする労力も馬鹿になりません。レモングラスやシマススキ、フェスキューなどと、背の高いアグロステンマやナデシコ、宿根カスミソウ、宿根アゲラタムといった繊細な感じの花を組み合わせると高原のお花畑のようなデリケートな表情が楽しめ、多少の雑草もかえって引き立て役として利用できます。ただし、アメリカセンダングサやオオブタクサなどの帰化植物は繁殖力も旺盛な困りもの。注意して小さいうちに抜き取るようにしましょう。
7.植え込みの縁に常緑性のグランドカヴァーなどで落ち葉止めを
落ち葉をためやすい構造にします。風で飛ばされて散らからないように工夫できれば、どんなやり方でも大丈夫。 あると良いもの 呼び寄せたい生物によって、何を植えるかは変わります。
気ままにデザインしてみよう!
日なたのイングリッシュガーデン風ぽけ・び!
日なたを好む生物の種類はとても多いので、初めての一でも簡単に計画できます。落葉樹を多く植えて、夏は涼しく、冬は日差しの暖かな庭に。落ち葉の下のカタツムリやコガネムシの幼虫など冬越しの生き物目当てに小鳥たちもやってきます。
- 低めの混ぜ垣 メジロやウグイスの隠れ家に。 サザンカ、ネズミモチ、ナワシログミ、シャリンバイなど
- キッチンガーデン風 小鳥や虫と半分こですね。 セロリ、ルー、ルッコラ、ローズマリー、ミニトマトなど
- 実のなる落葉低木 ガマズミ、ムラサキシキブ、ユスラウメなど
- 多孔質な敷石 伊勢錆などの砂利を撒いても良いでしょう。
- グランドカヴァーの縁取り 地面を被って落ち葉を溜めます。 アイビー、コトネアスターなど ジョウビタキなどが虫を探しに来ます。 猫避け効果も。
- 明るい林床には球根や宿根草を。ヒアシンス、リコリス、カサブランカ、メドウセージなど
- 巣箱 かわいいデザインなら庭のアクセントにも。
- 常緑低木 クチナシや外斑アオキ、シャクナゲなど
- マルハナバチの巣箱 (細竹を水平に束ねたもの) 実の付きも良くなります。
- 木道 滑り止めの工夫を忘れずに。 茸が生えたり、カミキリムシの仲間も楽しみ。
- 湿生花壇 アスチルベやギボウシ、フジバカマ、ミソハギなど
- 椎茸ホダ木やソダ カブトムシなどの甲虫の住処にも。
- 蜻蛉池 雨水も利用しよう。ヒメダカやタニシを忘れずに。
- 中の島 ブルーグラスやベアグラスで被ってカルガモを待ちましょう。
- 水生植物 アシやガマのほかにミズカンナやパピルスも楽しい。
- ナチュラルスタイル一年草花壇 ビオラ、ストロベリーキャンドル、スイートアリッサム、フェスキューなどで草地風に。
- 敷石の間にはタイムやブローディアのマットを
- 餌台 庭でとれたヒマワリの種やカキなど置いてみては
- ブルーベリーの茂み
- トレリスのムベ、ラズベリー、ハニーサックルなどで壁を被う
- コオロギも楽しめる草むら レモングラス、シマススキ、ハギなど
A フェイジョア
B ヒメウツギ
C ソヨゴ
D ホオノキ
E ブッドウレア
F アベリア
G エゴノキ
H キンカン
I コナラ
J ヤマボウシ
K ズミ
L ヒメリンゴ
M オリーブ
N キブシ
O ニオイバンマツリ