樹齢五百年の 古木と共に考える 都市環境

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推定樹齢五百年の壮麗なシイの樹や土塁の上に茂るスジダイの樹林。江戸時代には松平讃岐守の下屋敷で、古くは室町時代の豪族、白金長者の居地だったと伝えられるのが、この自然教育園。ここにも連綿と伝えられた生命がありました。

環境破壊が進む東京のほぼ真中に位置しながら、かつての武蔵野の豊かな自然がほとんど手付かずの状態で残る貴重なエリアです。

園内には台地、湧水地、湿地があり、天然記念物に指定されている林もあります。特に見応えあるのが、植物群。メインストリートの両側を、かつての武蔵野の林を彩 っていた野草や花が見本園のように植えてあります。東京では絶滅危惧種にあげられている貴重種も驚くべき数があります。池の周辺には最近住み着いたオシドリ夫婦が繁殖しています。これは都内では非常に珍しいことで、樹洞の発達した古い森が残されているからこそ、こんなことも可能なのです。
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カサスゲに混じって咲くノカンゾウ

ここの特徴は、中の環境にほとんど手を加えず自然遷移にまかせているエリアとビオトープとして管理しているエリアのあることです。また、展示施設に足を踏み入れれば、最近増えた昆虫、減った昆虫などが一目で分かり、草地はどうなって、松林はこんなふうになって…など。昭和24年の開園以来、50年に渡る自然の移り変わりが具体的に図や統計資料で閲覧できるのです。

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自然教育園の植生の変化。
左から1935年、1949年、1990年

 

ここに棲む生物や植物たちの顔ぶれは多彩です。環境を整えれば東京のビル街の中でもトンボやカエルは生きていけるという確証です。

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国立科学博物館付属自然教育園

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自然教育園の広さは、約二十ヘクタール。武蔵野の自然の面 影を後世に残すことを目的としながら、自然保護思想の普及に勤めています。ですが、ひとくちに自然保護といっても人それぞれで、興味の対象も違ってくるはず。そこで、ここでは立地を生かして樹木や野草、水生植物など中心になる植栽を決め、解説を行なう教材園をそれぞれ設置。動物については野鳥、チョウ類を中心にした施設があります。興味あるものから自然を理解してもらおうと言うわけです。

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国立科学博物館附属自然教育園
http://www.ins.kahaku.go.jp/