なぜ挿し木なのかな?

「近所の林に実がいっぱいなる樹があって、小鳥たちが遊びに来ている。う~ん、私の家にも1本欲しいわねえ。」なんて言うとき、一番良いのはその実をひろってきて種を蒔くこと。でも、種まきって言っても野生の植物には気難しい植物も多くて、ちっとも発芽してくれないことも多いのです。そんなとき、その木や草を根こそぎ抜いてきてしまったのでは、わずかに残された生態系を破壊してしまうことになってしまします。そう言った意味では、挿し木は残された環境に対するダメージを最小限に抑え、目的の植物を増殖させる方法といえます。

林の持ち主にお願いして、なるべく枝が込み合った場所から株の内側に向かって伸びている枝を1枝もらってきましょう。そういう枝は将来日光不足で枯れてしまう運命にあります。そんな小枝が、あなたの助けを借りて一本の樹になって、小鳥たちを呼ぶ。なんか、素敵じゃないですか?

梅雨時の楽しみの一つに挿し木をあげる人がいたら、かなりの園芸フリークといえるでしょう。

実際試してみるとおわかりになると思いますが、種から蒔くよりずっと効率的な面 もあるのです。たとえば、インパティエンス(蜜源としては不適当ですが)などは種から育てると花が咲くまでに3ヶ月近くかかりますが、挿し木なら、次の週には確実に花を見ることが出来ます。僕はインパティエンスのポット苗を5月にほんの数鉢だけ買ってきて、挿し木で殖やして、7月までにシェイドガーデンの縁取りを完成させたことがあります。驚くほど成長が早くて、簡単でしたよ。一方、4月に種から育てた方はその頃になってやっと最初の花がついたところでした。

ご近所から珍しい草花をお裾分けしてもらったとき、挿し木で殖やしてみるのも楽しいものです。5年ほど前に友達がイタリアのお土産って言ってローズマリー等々ハーブの小枝をくれたのを早速挿し木したのが、今でも実家の庭で食卓をにぎわしていたりもします。

簡単な挿し木のポイント

  1. sasiho

    刺し穂は10~15cm。茎の先端でも途中でもかまいません。 長めに取った方が乾燥にも強いので、初心者の方にはお勧めかな。 切るときも、良く切れるかみそりなどでスパッと斜め45°ぐらいに切るのがこつ。 切り口の細胞が壊れにくいので、カビにやられる心配が減ります。

  2. sasiki

    下から3分の2ぐらいまで葉っぱを取ります。 これも、葉の根本から取ること。こうして出来た刺し穂は、樹の場合コップの水などに入れて2時間から1晩水揚げします。草の場合はそのままでもOK!

  3. 刺し穂を土の中に斜めに(30°ぐらい)埋めます。 こうすると重力刺激でエチレン(植物ホルモンの一種)が出て発根が早まります 。面倒がって刺し穂を直接土に刺すのも駄目。切り口がつぶれてカビの犠牲に。土は買ってきましょう。園芸用の色々配合のやつで大丈夫。 使い回しの土はお勧めしません。 枯れた根や葉っぱなどには、発芽や発根を妨害する成分が含まれていることが多いのです。
  4. アイビーはもともと乾燥に強いので、水は1~2日に1回程度で大丈夫。 乾かさないよう、たっぷりあげてください。ナスタチウムの様な草は加湿状態には弱いので、表面が乾いたらあげるという感じですかね。 間違っても鉢の底に皿を敷いて、水をためたりしちゃあ駄目ですよ。
  5. 1ヶ月は絶対にさわらないこと。 初めての人は、いつ根が出るかとわくわくするあまり、 1週間目ぐらいで誘惑に負けてそっと引っ張ってみるケースが多いんですよね。 出始めの繊細な根っこはそれでおじゃん。 で、枯らしてしまうんです。 あ、それから、大きな蕾は取っておくこと。 無駄な養分の浪費は挿し木には禁物です。 でも、インパティエンスは例外かな。あれは挿し木して2~3日で花が咲き始めます。 種なんかで増やすより効率がいいかも。

 

rooton
バラのようになかなか発根してくれないときは、こんな秘密兵器もあるよ。植物ホルモンで発根させるもの。 樹木用と草用の2種類が売られている。切り口にまぶして挿すだけ。

その他の注意

刺し穂の葉の枚数は、多いほど発根が早くなります。 ただし乾いて枯れてしまっては元も子もありません。水やりを確実に出来る自信があれば、多めに残し、そうでない人は少な目にしましょう(^^;

アジサイのように大きすぎる葉は半分に切ったりして、蒸発する水分を調節しましょう。

種類によっては、挿し木に向かないものもあります。お手持ちの園芸書を参考にして、色々試してみましょう。