都会の子供のために 緑と水の オアシスを!

ここは、東京都世田谷区の代沢。近くには若者に人気の下北沢があり、電車に5分も乗れば渋谷という場所です。社寺や住宅地の緑も比較的多く残っていて、緑に対する意識の高さが伺える地域。

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ヒヨドリのつがいが仲良く休んでいた

 

その一角の、せせらぎ公園を中心において東西に小川が流れる、緑豊かな散歩道があります。都会では少なくなったススキやヤブカンゾウがあり、せせらぎにはミゾソバや、セキショウが水際を彩 っています。

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ここが一番最初に作られたエリア
当初の植栽の名残でセキショウが異常に多いのは別として、かなり植生は復元されてきている。もう少し低木が茂るようになれば、ウグイスやメジロも住み着くはず

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手前が流水域で、向こう側が止水域
それぞれ利用できるトンボの種類が違う。
金網に包まれた小石は、本来なら速い流れに岸辺が削り取られるのを防ぐための工法だが、ここでは止水域の確保に役立っている。地元民の知恵に感心させられる

 

玉川上水が、長い歴史の中で一般市民に愛されてきた結果としてビオトープ的役目を果 たしているのに対して、この北沢川緑道は地域市民が計画から管理までを行ない、失われた風景を市民の力で回復させた点で異なります。現在は全面 通水はしていませんが、平成9年に一部の通水式を終え、平成13年までには、延べ5.7キロメートルものグリーンベルトが完成の予定です。

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多摩川べりからお嫁入りしたネコヤナギ。
ここが本当のコリドーとして機能するほど、長大なビオトープに発展してくれることを願わずにはいられません。そのときには、多摩川沿いかどこかからコムラサキが柳の葉っぱを求めて遊びに来るのかもしれません

 

小川の一部に子供たちが自由に入れるエリアがあるということも特筆すべきでしょう。暗渠排水路のふたの上に小川を造っているので子供たちが入っても安心の深さ。結果 、子供たちはトンボのための生息流域を造るなどして、彼ら自身も積極的に地域の自然回復に参加しています。ビオトープは地域すべての人たちの理解の上で成功するものです。一部の人間だけで自然は戻りませんね 。

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このあたりにジャノメチョウの生息が確認されていたので、食草として植えられたアズマネザサ。残されたわずかな生物にも心を配るビオトープの施工は、意外に貴重だ。地元民の細かい観察力に脱帽

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北沢川緑道

ここを流れる水は、下水を高度処理した再生水をオゾン曝気して利用しているため水温は常に20度前後あり、流れに生息できる生物の種類はどうしても限られてしまいます。しかも水源の新宿区で大雨が降ると自動的に断水してしまう。さらに暗渠の上の水路という理由で深さが一定に定められている上に、流れの中の石の大きさも厳しく制限されている。そのため、断水の度に水が全く残らず、何度も魚が全滅しているそうだ。自然回復の足掛かりにするには余りにも厳しい条件ですね。

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このごろようやくカワニナが定着したようだ。自然の小川なら、川底も泥、砂、石と多様だが、なぜか、ここでは小石の大きさから材質まで一定に管理されている。地元民の声は、ここまでは聞き入れてもらえなかったようだ

 

沿道緑化は、できるだけ自生していた植物を植えたり、種が飛んでくるのを根気よく待つという姿勢で取り組んでいます。しかし、附近にアシなどの自生地がないため、本来の植生回復はなかなかはかどりません。少しでも油断すると、セイタカアワダチソウやオオブタクサ、アメリカセンダングサなどといった帰化植物が入り込んで来ます。去年あたりは、ドブネズミが住み着いて、駆除に大わらわ。住宅地を自由に移動できるほ乳類は、この界隈では他に生息していないのだから仕方がないか。

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反響が大きかったので、最近拡張されたエリア。地元の方たちの意見も大幅に採り入れられ、流れの表情にも起伏がある。にもかかわらず公園植栽が中心なのは、まあ、お役所関係のことだから当然といえば当然。今後の住民たちの活躍を応援しましょう

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ここは、当初の世田谷区の計画がそのまま通 ったエリア。暗渠になった川の上に造られたせせらぎ。切り立って隙間のない石組みなので、堅牢この上ない仕上がりだ。近所に住んでいるガマガエルが産卵に来たら、もうはい上がることはできないけれど、生憎とここはビオトープではないのだ。わざわざ新宿区から取り寄せられた高度下水処理水はあくまでも透き通 り、さわやかに流れ去る。春にはサクラでにぎやかな散歩道となる

 

それでも、野鳥のために実のなる木も植えました。誰かが放したヒメダカが群れています。 それをついばみに白鷺がやってきましたカルガモのヒナもなんとか巣立ちました。鳥たちを驚かせないようにと、子供たちまでが静かに遠くから見守っていました。

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こちらは北沢川の大部分を占めるエリア。元々川沿いの桜の名所だったところだが、生活排水の流入などで水質が悪化すると同時に都市型水害が再三引き起こされたため、暗渠化された。今では静かな住宅地を抜ける散策路になっている

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お隣の小学校の前には、赤い実をたわわに付けたビナンカズラのフェンスがある。目隠しの役目も果 たし、小鳥たちも安心して食事ができる