おやっ、巣から落ちたのかな?
助けてあげようか?
ちょっと待って!
ヒナを拾って来てはいけませんよ!!

このコーナーでは、野鳥を保護するときのポイントを紹介しています。

 

  • 巣立ち直後のヒナ鳥は、つれてこない
  • 様子がおかしいからといって、むやみに追いかけ回さない
  • 病気に注意

 

晩春から夏にかけては、巣立ちの季節。 それはまた、親鳥が餌を運んでくるのを待っているヒナ鳥を通りかかった人が見かけて、巣から落ちたんだと勘違いして拾ってきてしまう事故があとを絶たない季節でもあります。

あなたの迂闊な親切心が、野鳥たちに生き別れの悲劇をもたらさないよう、十分注意しましょうね。

1.ヒナを拾って来てはいけません!

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巣立ち間もないキジバト。
親鳥は、どこかにエサを探しに
行っているのでしょうか

巣立ちしたばかりの雛は、まだろくに飛べず人間に対しても警戒心がないので、近くに親が潜んで見守っているのを気がつかずに連れて帰ってしまう人も多いので、注意が必要です。

特にヒヨドリの雛はかなり早い時期に巣をでてしまうので、巣から落ちたのだと勘違いして拾ってきてしまう人も多いのです。

 

ポイント

  • 巣立ち直後のヒナ鳥は、つれてこない

 

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空き地でスズメのヒナが1羽。
迷子かなと思ってしばらく様子を見ていたら、
親鳥がミミズを運んできました

 

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晩春から夏にかけてが巣立ちの集中する季節。

この時期には庭木の根本や塀の上、道ばたなどでくちばしの周りのまだ黄色いヒナ鳥が、ときどき翼を小刻みにふるわせながら鳴いているのを見かけます。

これは巣から落ちたのではなく、親を待っている状態のことが多いので、「かわいそう」だなんて早とちりして連れて来てはいけません。親たちはこれから3~4週間の間、雛にえさを与え、いろんなことを教えていかなければならないのです。

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末っ子がやっと巣立ちした日。
遙か頭上のアンテナから、カラスの両親が見守っていました

 

 

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ヒナ鳥の中には成長の遅い者もいて、兄弟たちにつられて落ちるように巣立ってしまうこともあり、これが致命傷になることも。

でもたいていの場合、親たちがいる限りは、次の日には枝移りしながらでも兄弟と一緒になっているので、もしヒナ鳥が地面に落ちていたとしても、近くの枝にとまらせてあげるだけにして、遠くからしばらく様子を見ていてください。

きっと親が来るはずです。

都市部でよく見かけるヒナ鳥は、スズメ、ムクドリ、ツバメが多く、ついでシジュウカラやカワラヒワ、メジロ、オナガなどがあげられますが、どれも育てるのは大変で、拾ってきても死なせてしまうケースの方が多いようです。

それでも、もし子供たちがヒナ鳥を連れてきてしまったら、近くの獣医さんや野鳥の会などに相談してみてください。

 

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2.様子がおかしいからといって、むやみに追いかけ回さない

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それは、最後の寒波が東京を襲った日。
すみかにしていた公園の木々が切り払われ、
飢えて死にかけているメジロに出会ってしまいました

 

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ポイント

  • 様子がおかしいからといって、むやみに追いかけ回さない

 

簡単に捕まるほどに弱っている場合はともかく、多少なりとも抵抗できる体力の残っている場合は、小鳥だって必死です。野生生物にとっては、捕まることは死を意味しますから、あらゆる抵抗を試みます。

追いかけ回したあげく逃がしてしまったのでは、かえって死を早めることに。

スズメなどは、パニック状態になると口を半開きにしたまま、身動きがとれなくなったりします。間違って教室内に迷い込んだスズメが、ガラス窓にさんざんぶちあたったあとでこの状態に陥ったのを捕まえたことがありますが、手に心臓のものすごい早さの拍動が伝わり、ぎょっとしました。

すぐには飛べない状態だったので、小さな段ボール箱に入れて暗くし、30分くらいそっとしておき、落ち着いたころに箱ごと外に持っていってふたを開けて離れました。無事飛び立って、一安心。

とにかく、できるだけ恐がらせないことが第一です。

 

ポイント

  • とにかく、できるだけ恐がらせないこと

 

つかまえるときの注意

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勢い込んで近づかないこと。

出来るだけ怖がらせないようにゆっくりと退路を塞ぎながら間合いを詰めていきます。

出来れば「君には興味なんか無いんだよ」とでも言うように、あんまり視線を合わせないようにしましょう。

まるで他のものを探しているかのように、あらぬ方向を見つめながらジグザグに進んで近づければ最高ですが。

 

ポイント

  • 鳥のお腹がわを握らない

 

捕まえるとき、絶対にお腹がわを握ってはいけません。

雌の場合、胎内に卵があることもあり、うっかり力を入れると体内で殻が割れて致命傷に。翼側からそっと固定するよう注意します。

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捕らえた時もがいて怪我を悪化させないように、後頭部側から手などでそっと目隠しをすると、おとなしくなります。

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ハンカチなどで体をくるんで、暗くしてあげられればベストでしょう。病気や骨折の場合、私たちが見てもわからないことが多いので、とにかく獣医さんに見せましょう

凍えて動けなくなった小鳥の場合は、とにかく暖かくしてあげること。

体が温まってくれば、大抵は元気を取り戻し始めるものです。

 

ポイント

  • できるだけお金をかけない

 

かわいいからと言って、ついいそいそと鳥かごなんぞを買ってきてはいけません。

別れがつらくなるばかりか、このまま飼ってしまおうかなんて、悪魔のささやきが聞こえてくるはずです。

段ボール箱やプラスティック収納ボックスなど、身近にある物で代用します。凍えた野鳥なら無理矢理餌を食べさせて暖かくしておけば、1日で回復することも多いのです。

また、捕らえられた成鳥はハンガーストライキをするのが普通で、決して馴れません。餌や水を入れて置いても無駄になるだけでなく、そのまま飢え死にされてしまいます。

 

ポイント

  • 翼側から軽く握り、残った手で目隠しする
  • 鳥のお腹がわを握らない
  • とにかく暖かくしてあげること
  • できるだけお金をかけない

 

飢えて動けないこともあるので、獣医さんに見てもらって状況が把握できたら、さっそく餌を食べさせなければいけません。

小鳥たちの体は、体重あたりの表面積の割合が、僕たち大型哺乳類と比べて遙かに大きいため、急速に飢えが進むのです。

 

参考

体が極端に小さいハチドリは、いちどに大量の食事ができないので蓄えられるエネルギー量にも限界があります。自分のなわばり(定位置)にじっとしていることも多いのですが、しばらくすると蜜の採取へ何度も何度も繰り返し出かけてしまいます。その回数は1日に60回以上。が、そこまでしても、ようやく体重の3倍程度の蜜しか摂取できません。激しい運動量の代償も大きく、結果的に大量のエネルギーを消費することになります。夜になって気温が下がれば、体温を下げないためにも更なるエネルギーが必要となります。小さな体は体温を上げるためのエネルギー消費はわずかですが、体が冷えるのも早いのです。大きな鍋のお湯よりも、小さなカップのお湯のほうが早く冷めますよね。

よって彼らは、「エネルギーを消費しない方法」をとるのです。それは極端に体温を下げ、呼吸も心拍数も減らしてエネルギー(カロリー)を溜めておくことです。アカフトオハチドリの平均体温は41℃ですが、夜はなんと外気温と同じくらいまで体温を下げるそうです。仮死状態で眠ることで、 冬眠のような効果が得られます。

 

エサの与え方

背中側から片手で軽く鳥を握り、つつかれないように親指と人差し指でくちばしの根本を固定します。

残りの手の親指と人差し指をくちばしの根本あたりの隙間にねじ込み、やさしくこじ開け、くちばしの根本をおさえていた指で閉じないよう固定します。

ヒヨドリやメジロならスポイトでジュースを与えても良いのですが、練り餌などをねじ込んでくちばしを固定していた指をゆるめると、自分で飲み込みます。

与える餌の種類や量 、回数は、鳥の種類や状態によって違いますから、獣医さんに相談してみてください。

 

病気に注意

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大陸から渡ってくるガン、カモ類にはインフルエンザなど人間にも感染する病気を持っていることもあるという説もあり、注意を要します。

そのほか、ハトにはポリオ(小児麻痺)ウィルスを媒介するのもいるといいます。まあ、むやみにさわらないことですね。

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特にちょっと見ただけでは死因が判らないようなのには手を出さない方が懸命というものでしょう。

ちなみにこのキジバトは、車と接触したのが死因のようでした。

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一方こちらのカワラヒワは、建物のガラスに激突したのが原因のようでした。

人間と接しながら暮らす野鳥には、自然界とはまた違った危険も付きものなんですねぇ。

 

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もっとも、中にはセキレイみたいに、自分から窓ガラスに挑み掛かっていくヤツも居ますがね。

 

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それでは、次に、無事助けてあげられた例を紹介しましょうか。

3.寒波の中でヒヨドリくんに出会う

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無事元気になって、林に帰っていきました

それは2000年2月29日のことじゃった。 ペットなら健康保険もあるけれど、 野生動物じゃやっぱり保険とかないんですよね。

って、初診にしては安かったかな。

ちょっとだけ懐は痛んだけど、ハートは暖かくなりました 。 で、ヒヨドリの恩返しはあったのかって? それは、ないしょ。


2000/2/29

4年に一度のおまけの日だって言うのに、ヤケに忙しい。 大きな病院の脇を自転車で区役所の出張所に向かう途中、路地の脇に3人の男女がなにか心配そうにささやきあっている。 近頃は日本もずいぶん物騒になったので、おずおずと遠巻きにのぞいて見ると、アパートの横のフェンスの上に何かうずくまっている。 ヒヨドリだ。

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「道路の真ん中に落ちてたのを、さっき女の人が可哀想って、ここにのせたんだけどね。元気ないのよ。アタシの家じゃ面倒見てあげられないし。私、猫ちゃんも飼ってるし」

「車にあたったわけじゃないみたいなんだがね。こっからそこまでは飛んだんだよ」

そんなに興奮した調子で矢継ぎ早に言われても困ってしまう。

恐がらせないようにそっと近づく。

山用の黄色いヤッケをちらっと後悔する。

怪我をしてるかも知れないからバトルは避けたい。

お互いの息詰まる瞬間。

あれま。

意外にも無抵抗で手の中におさまってしまった。 鳩より一回り小さいかな、というのが第一印象。 怪我はしていないみたい。

ここ2、3日、なんだか急にとんでもなく寒い日が続いたからかな、寒さに凍えて動けなくなっただけなのかも知れない。

やれやれ。行き倒れのヒヨドリくんを拾っちまったぜ。

普段の気の強さを知っているだけに、この大人しさが不安にさせる。

でも、スズメみたいにパニックにならないだけましかな。

ヤッケの前ポケットに入れてファスナーをしめる。 これから区役所だってぇのに、カンガルー状態かい。

むかし、九官鳥を捕まえたときのいやな記憶が、チラッと横切る。だけど、その話はまた別 の機会に。

区役所を出て見るとヤッケにシミが。

案の定、ポケットの中に糞をされてしまった。

所内でバタバタされなかっただけ、ましか。

で、近所の獣医さんへ。

怪我してるかも知れないって言ってるのに、荒っぽい診断で、いきなりビタミン剤飲まされて700円。

「 あったかくしてあげてください」だって。それだけかい。

骨折とか病気とかあるだろうに、 僕が見ただけでもわかる範囲のことしか言ってくれなかった。 野鳥は可哀想だね。

詳しい状況は、何一つ明らかにならないまま帰宅。

念のため獣医をしている友達にも連絡する。

やっと捕まったと思ったら、やっぱり小鳥はとにかく暖かくすることなんだそうな。

確かにポケットの住人は、さっきより落ちつきがない。

そんなものなんでしょう、きっと。

ミカンジュースをスポイトで飲ませて、透明なプラスティックのボックスに入れ、ネットをかぶせる。

食べないとは思うけど、ブルーベリーの実とジュースも入れておく。

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日が暮れたので寝かさなくっちゃと思って青いバスタオルを掛けたら、急にガタガタ騒ぎだした。

カチャカチャ、ポチャンなんて音も聞こえてくる。 何も入れるんじゃなかった。 黒いコートをかけてみる。 今度は静かだ。やれやれ。

………………….

やっぱり、朝早く起こされた。

これだけ騒げるんならもう大丈夫か。

念のためもう一度ジュースを飲ませてから、手で目隠しをして、目と鼻の先にある病院の森につれて行く。

池の畔の茂みでそおっと手をはなすと、近くの枝まで飛んでいって、くちばしを何度も何度も小枝にこすりつける。

無理に飲ませたジュースがついて、気持ち悪いらしい。

でも、やなかんじ。

元気に森の中に消えていったのを確認してから、ぼくはポケットに手を突っ込んで歩き始めた。

…….後かたづけが、大変だ。