たとえば、同じメダカなのに日本海側と太平洋側では遺伝子的に違いがある。だから、それぞれの地方ごとに残されているメダカの特徴を、上手に保存できるようにビオトープを造るときには細心の注意が必要です。

メダカに変わりなんか無いじゃん!なんて思ってる人は、ビオトープを造る前にぜひ読んでもらいたいですね(^^;でないと、自然保護しているつもりで、実は自然破壊しているなんて事になってしまいますからね。

高山植物を植えると罰せられます

「高山植物を植えると罰せられます。」 いずれは登山口にこんな立て札を立てなければいけない かもしれない……….。 2001年10月25日の読売新聞夕刊の記事だ。
本来コマクサが分布していない北海道の樽前山や羊蹄 山、前天塩岳などに人工的に増やしたコマクサを植え付 けた人がいるのだ。羊蹄山では環境庁が抜き取り作業を 行ったと言うことだけれど、ある生物がそこに生息して いるかいないかというのは、地球の長い歴史上の様々な 事件を反映した結果で、そのこと自体が重要な情報を含 んでいるものなのです。しかも、それぞれの山に生き残 っているコマクサにしてみても産地ごとに様々な遺伝的 な特徴の違いを持っており、それが進化や適応に将来関 係していく可能性だってあるんです。

簡単に言えば、産地ごとにそれぞれの顔がある。それ は大事に守って行かなくてはいけないと言うことなんで す。僕たちがそれを見分けられないからと言って、他の 産地のものを持ち込んでしまうと、その土地ではぐくま れてきた特徴は破壊されてしまうのです。

一方、コマクサが分布していない山にもそれなりの生 態系のバランスがあり、それは氷河期の終わりとともに 起こった様々な変化の結果だったりするのです。ただ単 に綺麗な花が咲くからとか、貴重な植物だからと言って 人間が栽培したものを植えることは、これらの気の遠く なるような年月をかけて蓄積してきた生物たちの歴史的 な財産を破壊してしまうことになる訳なんです。 人間が不用意に持ち込んだ生物が、本来あるべき環境に どれほどの被害を与えてしまうものかは、帰化植物の例 を考えればわかりやすいのかもしれません。
この記事の何日か前にもハヤチネウスユキソウの大量培 養に成功したというニュースが出ていたばかりだ。

エーデルワイスの大量増殖に成功
岩手の高校生ら

欧州アルプスの山中に咲くスイスの国花エーデルワイ スの大量増殖に、岩手県滝沢村の県立盛岡農業高校の生 徒らが成功した。北上山地の主峰、早池峰(はやちね) 山(1917メートル)や北海道のごく一部山域にだけ 咲くハヤチネウスユキソウなどウスユキソウ全般 に応用 できる独自の培養法だ。 -中略-  植物増殖研究の第一人者、北海道大大学院の大沢勝次 教授(園芸学)は「ほかにないユニークな方法で、非常 に貴重な成功例。試験管の中の成功にとどめず、成果を 山に返し、希少種を絶滅から救えれば素晴らしい」と期 待する。 (2001,10/24 16:52)朝日新聞

これが園芸目的で繁殖されるだけならまだしも、ハヤチネウスユキソウの自生地に植えられたりしたら、とんで もない自然破壊になってしまう。大沢勝次教授、だめじ ゃん。まあ専門が違うから仕方ないかもしれんのだけど、 集団遺伝学とか進化とか生態系とか、もちっと配慮して 欲しいのよね。しくしく。こういう不用意なコメントが 一人歩きすると、コマクサを植えて回るような困った人 が後を絶たなくなって、大変なことになっちまうんだっ てばさ。困ったもんだす。 羊蹄山では環境庁が抜き取り作業を行ったと言うことだ けれど、当の環境庁だってトキの保護に関しては決して ほめられたものではない。なんと佐渡島に中国産のトキ を放したがっている。日本のトキを全部飼い殺しにして、 まだ懲りてない。トキが居なくなった生態系のバランス そのものを改善しても、絶滅しちまったものは戻らない んだけどねえ。

 あたまかかえてます

こんな記事を見ると、去年八ヶ岳で感動したコマクサはなんだったのかと、疑いをも たなければならないのかと、そら恐ろしいですね。 登山路ぞいでも、よく保存されている感じで、登山客のマナーがよくなっているせい だねと、感心していたのですが。ひょっとして、自生のものでも「植えている」?

で、早速調べてみたら、しゃれにならない状態。

http://www.avis.ne.jp/~ttoshi/hp-s001-k.html
高山の日当たりの良い砂礫地に生育。高山植物の女王な どと呼ばれ人気が高いがゆえに盗掘も相次ぎ、また地域 を越えた移植が行われるのを憂慮する。白山にコマクサ はなかったはず。また、三方ケ峰のコマクサは白根山か ら移植されたものと言われている。 美しく、たくましく、多くの感動を人に与えるが哀しい 想いの花。 湯の丸高原三方ケ峰(99.7.10)

http://club.pep.ne.jp/~itomsa/shwv2/syama/syc3yoko.htm
北横岳 ロープウェイ山頂駅にある坪庭は自生の高山植物に加え て、コマクサなど移植したものが多く、 中でもクロユ リなどは移植して根付いたものと思われる。

http://www.mcci.or.jp/www/minamidake/day010811.htm
南岳小屋・管理人の日本最高所のオンライン日記 8/11 3年前に移植したコマクサも2株が根付いていて、数輪 の花を咲かせています。

犯人を見つけてしまった。 さて、これからどうするかだね。
と言うわけで、もともとどこの産地から持ち込まれた物 かは、現時点では不明です。

地方変異の原因の一つビン首効果

ビンの中に赤い玉と白い玉を50個ずつ入れます。

そ れぞれの意図の割合は50%、ビンの中身は見えません。

さて、この中から適当に20個、玉 を取り出してみたら どんなことが起こるでしょうか?

赤と白は半々なんだか ら赤10個白10個に決まってる!なんて考える人は居 ませんよね。ほんとに試してみると、たまたま赤6個、 白14個だったり、赤12個、白8個だったりとぴった り半々にならない方がが普通だったりします。もっとも これは何回となく繰り返し実験していけば確率は1/2 に近づいていくのは、まあ常識なんですが、1回や二回 だけの実験ではたいていの場合1/2なんかにはならな いんです。取り出す数が少ないほど、もともとのビンの 中身とはかけ離れた割合になってしまうのです。

これは 宝くじでも似たようなもの。当たりくじを手に入れる確 率は一定のはずなのに、たった一回買っただけで大当た りする人もいるって言うのが良い例じゃありませんか。 もっとも、全部買い占めても、儲かるのは胴元だけです けどね。世の中、そんなもんです。(^^;

話がそれた。

さて、もう少し実験を続けましょう。ビンから20個 ずつ玉を取り出して、5つのグループにします。次にそ れぞれのグループから10個取り出します。これが2世 代目のグループとしましょう。ここからさらに5個取り 出します。こうやってできた3世代目のグループを見る と、中には赤玉ばかり白玉ばかりのものも見つかること があります。

この結果を、世界地図に当てはめてみましょう。赤玉 を赤花の植物、白玉を白花の植物と考えてみたり、Rh +の血液型とRh-の血液型に見立ててみると面 白いこ とがわかります。元のグループから少しだけ採って他の 地方に持っていくという操作を繰り返すと、グループの 構成メンバーの割合が次第に本来の生息地のものからか け離れたものになっていくのがわかると思います。

これがビン首効果です。

こういう偶然が生物のあらゆる遺伝子で起こるんです から、ある生物の分布拡大がたとえ自然状態で起こった ことであっても、本来の分布地から離れていくほど変わ ったものが見つかることが多くなるのです。アジアの端 っこにある日本に、固有種が多いのもうなずけます。

ですから、近くに貴重種の野生地があるからと言って、 考えなしに何株か採ってきて新しいビオトープに移植す ると、結果として本来の遺伝的多様性とはかけ離れた集 団ができあがってしまったりするのです。

まして、産地不明の苗を買ってきて植えるなんて、も ってのほかです!!!!

では、本来の自然になるべく近くなるようにビオトー プの生物層を再現するためには、どのような点に注意し て集めてくればよいのでしょうか?後日、この辺のこと を詳しく書こうかな、なんて思ってます。