トンボが飛ぶ庭。穏やかな水辺のコーナー造り
あなたが住んでいる周囲でトンボを見かけたら、適切な水場を造ることで、 庭先でトンボの飛ぶ風景を楽しむことができます。 池を造る必要なんてありません。水鉢がひとつあれば、マンションのベランダでも大丈夫。
雨上がりに出来た道路の水たまりに尻尾をチョンチョン浸けながら飛んでいるトンボを見たことはありませんか。ムギワラトンボ(シオカラトンボの雌)や夏の終わりに山からおりてきたアキアカネ。一頃ほんとに見かけなくなったのですが、最近では減反政策で休耕した水田跡地で繁殖したトンボたちが、町中に迷い込んできて、産卵場所が見つからないためにアスファルトの上に出来た水たまりに産卵してしまうのです。
もし、あなたの庭やベランダに池を作るのは無理だとしても、スイレン鉢を一つ置くだけで気の毒なトンボたちを助けることができるのです。
トンボの仲間は縄張りを主張する種も多いので、あなたの庭に住み着くことも多いのです。我が家ブランドのトンボなんていかがですか?
- 素焼きのスイレン鉢
- 直径50cm前後 中仕切り用の小枝
- 直径前後の長さ、ふとさ1~4cm
- 小石(伊勢錆などの表面がざらざらの物がよい)1/3袋程度
- 水草
日なたなら、クレソン、ガマ、アシ、イグサ、スイレン、ミソハギ、クワイ、パピルス、フサモなど
日陰なら、フイリゼキショウ - ヒメダカ10匹前後
- タニシまたはモノアラガイなど2匹以上
- 好みでヌマエビなどもOK
ご近所のトンボ事情を調べる
トンボは幼虫(ヤゴ)の時代を水の中で暮らし、羽化すると多くの種類は、一旦水辺を離れ林や原っぱで暮らします。そして繁殖期を迎える頃に再び水辺に戻り産卵するのです。
庭にトンボを呼ぶためには、まずトンボが周囲にいるのを確かめなければなりません。アキアカネのように、高い山まで長距離移動する種ばかりなら良いのですが、多くは縄張り周辺を行ったり来たり。近くにトンボがいないと呼べないのです。
なるべく素焼きの睡蓮鉢を使う
確認ができたら、水辺を造ります。まず、直系50センチ、高さ20センチ程度の、できれば素焼きの水鉢を用意し、小石を入れます。
素焼きは表面 からたえず水分が蒸発するので夏の日向でも水温が安定するからです。
小石は少しでも十分ですが、伊勢錆の様に表面 がざらざらしたものがベスト。こういった石にはバクテリアがすみついて有機物を分解し、水質浄化に役立ちます。
アシなどの水草を植える
トンボがとまって縄張りを主張するための、同時にヤゴが羽化する場所として、背の高いガマやアシなどを植えます。このとき根洗いをして泥を落とすか、ビニルポットのまま植えると、アオコの発生を抑える事ができ水が濁りません。あとはお好みに合わせてヌマエビを入れて藻類を食べさせたり、ウキクサを浮かべて水温の上昇を防いでも良いでしょう。
ヒメダカを5~10匹。タニシを2匹
ヒメダカは、オスメス合わせて10匹程度。ボウフラを食べ、ヤゴの餌にもなります。掃除係のタニシを2個入れ、キンギョ藻などの水草をセット。メダカの産卵に備えます。タニシは雌雄同体なので2匹いればどんどん繁殖します。
餌を与えないで、ミニ生態系のバランスをとる
維持管理のポイントは、外から餌を与えず、ミニ生態系のバランスをとる事です。餌を与えると水が富栄養化しアオコなどの藻類の異常繁殖の原因になるのです。水草、メダカ、プランクトンの間で栄養分のバランスがとれるようにするには、よけいな手出しはひかえて、ミニ生態系のエネルギー収支が安定するのをじっと見守るのが一番です。
簡単に言えば、ほったらかしにすること。これに勝るものなし。次第に水が透き通 ってくるのを確認できるでしょう。
それでも、ミニ生態系のバランスは崩れやすいもの。ヤゴやヒメダカがふえ過ぎたら御近所にお裾分けして調整しましょう。
これらの装置は、たまり水で繁殖できるシオカラトンボや、アキアカネ、ノシメトンボ、イトトンボの仲間などが利用できます。近くに林があれば、森林性のコシアキトンボがやってくるかもしれません。このトンボは水質汚染に強いため、最近都市部で良く見られる様になってきました。
オニヤンマや、カワトンボのように水が流れていないと繁殖できないものもいます。これらの種を呼ぶには、残念ながら広い庭にちいさな流れをつくる必要があります。公園や学校の一部など、まとまった面 積が利用できるのであれば、ぜひ試してみて下さい。
あとは、減った分だけ水を足すだけ
素焼きの鉢はどんどん水分を蒸発させます。うっかりしていると、すぐに水がなくなってしまいます。頻繁にチェックして、水を補充しましょう。
まとめ
- 「呼びやすいトンボ」 たまり水に生息するものが呼びやすい
シオカラトンボ アキアカネ イトトンボ類(モノサシトンボなど) - スイレン鉢に小枝で仕切りを作る (素焼きの方が水温が安定)
- 片方に小石を入れる (表面がざらざらの石の方が水質が安定)
- 根洗いした水草を植える スイレン鉢などに産卵や羽化のために水草を植える
スイレンなどはビニルポットに入れたまま沈める (水を濁らせないため、湿原と同じ貧栄養状態にする) - 水を入れ、小石が少し見える浅瀬にする (小鳥は足が短いため、水浴びしやすい深さは1~2cm)
近所にいるほとんどの種類が利用するはず - 藻などの掃除のためにタニシやカワニナ、モノアラガイ、レッドラムショ-ンスネイルなどを二個以上入れる
- ボウフラの発生をおさえるためにヒメダカ、アカヒレなどの小魚を入れる
日なたなら10匹前後
日陰なら5匹前後 - 置き場所をきめる
カエルにも来てほしい時は鉢を地面に埋める
苦手な人は平置にするかスタンドなどにのせる
日なたの場合 アキアカネ、イトトンボ、シオカラトンボなど 開けたところが好きなので、近くに大きな樹など無い方がよい
日陰の場合 コシアキトンボ 木立の脇などがよい - 管理法
水が減ったら補充する
餌を与えずミニ生態系のバランスでやりくりする
なるべくいじらない (ミニ生態系のバランスがとれて来ると水も透き通って来る)
1種類だけ殖え過ぎたら、近所にお裾分けする
アメリカザリガニ、コイ、ブラックバスなどの悪食な生物を入れない
水辺の植物が『ビオトープ ガーデンセット』に
個人でビオトープを作るからと言って、気軽に身の回りに残された自然から珍しい水草などを採ってくるのは、ちょっと考え物。あなたのその行動が、残された自然を破壊していませんか?
開発の被害で一番大きかったのがこの水生植物との見方があります。水質浄化の点からも水生生物の保護からも危機的状況です。タキイ種苗がこういった問題の解決の糸口になればと『ビオトープ水辺の植物セット』を販売しています。中には、タコノアシや、アサザ、デンジソウといった絶滅危惧種もあり、種の保存にも前向きです。
ただしこれは、個人の庭に植えて楽しむだけなら問題ないのですが、ビオトープなどに植えたりするのは考え物。地方ごとの変異の多様性をめちゃめちゃにしかねません。どんなにささやかな生き物たちも、その生命の長い歴史物語を持っているものなのです。