鳥たちが集う庭。実のなる木を植えよう

庭に実のなる木を植えたり、巣箱をかけたり、水場を設けることで、 徐々に小鳥たちはやってきます。ただしすぐにではありません。 小鳥は最初警戒心でいっぱい。気長に待つとあとはもう大丈夫。 さえずりが聞こえたら、そっと小鳥との出会いを楽しんで下さい。

冬場だけ利用したい 鳥の餌台

野鳥に甘やかしは禁物です。

基本的に餌台の活用は冬場だけにした方いいでしょう。餌台にパン屑などを置けば、鳥はくるかも知れません。でも野鳥たちはそこで生活するわけではありません。

鳥は学習能力を持っていますから、つい餌台をあてにしてしまいます。あなたがちょっとした旅行に行っている間に野鳥たちが路頭に迷ったりというのも、困りもの。ですから、できるだけ自然の恵みである実のなる木や草をたくさん植えた方が、結果 的には鳥たちのためなのです。

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鉢皿を利用した餌場。右は小石を入れた水飲み場

でも、餌が少なくなる冬には、少しだけお手伝いしてあげましょう。

餌はナッツ類や果物、穀類など。鳥が自然の中で食べているものを、食べやすい形にしてあげることが大切です。ただし、殻なしの小鳥の餌やハト用を置くとドバトばかり集まってしまいます。必ず殻付きをあげましょう。

よく、餌台にスズメがくるのを嫌う人がいます。でも、スズメは警戒心の強い鳥なので、ほかの鳥たちは彼らがいるのを見て安心してやってくるようになるのです。やさしく見守ってあげましょう。

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さっそくメジロがやってきた。
茶色の壺はハト用の水飲み場を流用したもの

殻付きピーナッツはシジュウカラの好物ですが、塩分のないものをあげるように注意してください。食べやすいように殻の両端を切っておくと親切かも。ラードやヘットをシジュウカラのためにあげる人もいますが、カラスの好物でもあるので、やめておいた方が無難でしょう。

小麦粉2、マーガリン1、砂糖1の割合で造ったバードケーキも大好物。餌台の設置は巣箱と同じで、ネコに荒らされないように地面 から最低でも1メートルは放します。

メジロやウグイス、ヒヨドリのためには、カキやリンゴ、ミカンなどを切ってあげるとよいでしょう。ジュースを小さなコップに入れて餌台に置いておく人もいるようですね。

鳥の水場 を作る

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パスタ皿を利用した水場の例。滑らないように小石を入れて、
ひたひたに水を入れます。小鳥は足が短いので、深くしないこと

鳥の水場は、鳥が餌場にいる時よりもっと無防備になる所です。鳥自身もそれを知っているので、安全が保障されている所にしかやってきません。ですから、できるだけ見通 しのいい明るい場所に設置したいもの。そういう点ではマンションのベランダなどはネコという外敵がこないので、意外に多くやってきます。餌台を置くより水場を設けたほうが鳥の集まる確率は高いようです。鳥が多いと困るのがフンの問題。物干し台の近くに餌場を作るのは、考え物ですね。

でも汚れに嘆くより、いろんな鳥から排出されたフンには様々な種子も混じっていますから、いつか芽を出す謎の植物に期待してみてはいかかでしょう。大事に育てれば、あなたのベランダもさらに一歩、すてきなビオトープ・ガーデンに近づきます。

鳥の水場は、水飲み場であると同時に浴槽です。水浴びすることで、羽根の中の虫やゴミを落とします。小鳥がすべらないように石を入れるなどして浅めにすることが大事。 毎日忘れずに水を交換しましょう。そして、なにより気長に待つこと。たいていは1~2週間ぐらいで、小鳥たちが遊びに来てくれるはずです。

実のなる木を植える

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サクラの蜜を吸いに来たコゲラ。樹皮に隠れている虫も食べる。
メジロ、ウグイス、スズメ、ヒヨドリなどもやって来る

鳥にとって木は、エサにもなり、棲み家にもなる大切なもの。特に食料としての木の役割はとても重要です。花や密を食べることもありますが、なんといっても実のなる木が一番人気。実を食べるといっても、果 肉だけを食べて、種を排出する場合もあれば、種子が好物という場合もあります。いずれにしても実のなる木を植えることが、小鳥を呼び寄せる第一歩と考えましょう。

高さが違う木を植えれば、庭に来る鳥の種類が多くなります。 中形のヒヨドリや、カケス、オナガなどの用心深い鳥たちは、大きめの木があれば、上の方にとまって、辺りの様子をうかがいながら徐々に降りてきます。一方で、外敵に襲われる危険の多い小鳥もつねに緊張感を持っています。松やノイバラなど先の尖った樹木や、枝がたくさん交差している木があれば、敵から素早く逃げ込むことができるので、庭に余裕があれば、実 のなる木と一緒に植えてみて下さい。メジロやウグイスなどは特に密生した藪を好みます。

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サクラの蜜をスズメが盗んだあと。
花の付け根をつまんでしまうので、授粉の役には立たない。都心から
郊外へと新しい習性が広がっていくのを観察するのはおもしろい。よく見ていると、
スズメに混じって移動している他の鳥たち(混群と呼ばれる)も、まねをしている

でも、まさか庭の真ん中にざわざわと藪を作るわけにも行きませんね。庭の面 積に余裕があるなら、数種類の樹種を組み合わせて作る混ぜ垣がおすすめです。なるべく異なった時期に花や実が楽しめる組み合わせを工夫しましょう。

鳥たちにとって、木そのものはただ単に食べ物という存在だけではなく、羽根を休める休息所であり、身を隠す、あるいは巣としても活用する大切な場所なのです。鳥が遊びにくることで気付く楽しい発見です。

ベランダでも 野鳥が呼べる。エリアの植生調べ

では、どんな木を植えればいいのでしょうか。まず大切なことは、今住んでいるエリアにどんな木が多く自生または植えられているかということです。特に実のなる木を念入りに見て回るといいでしょう。近くの公園や、ご近所の庭などは重要ポイントです。散策途中で出会う鳥のチェックも忘れないようにします。

主な好み 鳥の種類 植物たち
フルーツ派 メジロ、ウグイス、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミ、ジョウビタキ、オナガ、ヒレンジャク 赤や黄色の実
高木 ヤマボウシ、ハナミズキ、ヤマモモ、カキ、ソヨゴ、クロガネモチ、シロダモ、エノキ、ウワミズザクラなど 低木 イチイ、マサキ、ズミ、カナメモチ、ノイバラ、ウメモドキ、アオキ、ガマズミ、ピラカンサ、ナンテン、フサスグリ、ユスラウメ、ウグイスカグラ、センリョウ、マンリョウ、クコ、グミなど 蔓、半蔓性 ツルウメモドキ、ラズベリー、ツルグミ、ミニトマトなど グランドカバー ヤブコウジ、ベニシタン、コトネアスター、イチゴなど
黒や青い実その他高木 ムクノキ、サクラ、タブニキ、クサギ、ミズキ、シュロ 低木 ブラックベリー、ブルーベリー、クワ、ネズミモチ、シャリンバイ、イチジク、イヌツゲ、ヒサカキ、ヤツデ、タラノキ、ムラサキシキブなど 蔓、半蔓性 ブドウ、ツタ、アケビ、キウイなど グランドカバー ヤブラン、ジャノヒゲ、アイビーなど
ナッツ派 メジロ、ウグイス、ヒヨドリ モクレン、コブシ、サクラ、ツバキ、サザンカなど
虫派 コゲラ、シジュウカラ、ジョウビタキ、ムクドリ、ツグミ、アカハラ 枝に潜むクモやイモムシ、ガやチョウ、場合によっては草花についたアブラムシ、それに芝生や落ち葉の下に隠れているミミズやコガネムシの幼虫などを食べる

植生が分かったら、実際に苗を植えてみましょう。ほとんど園芸店か造園屋さんで手に入ります。ベランダしかないという方でも木をプランターなどで植えれば大丈夫。その際は一本だけではなく、数本用意した方が、鳥たちも安心してやってきます。ご近所には冬場に実を付けるものが多かったら、「我が家では初夏から楽しめるスグリやラズベリー、グミなどを植えてみよう」などと、作戦を練るのも楽しいものです。

各家庭が一本でも木を植えていけば、それだけで、緑の回復に関わることもできますね。

巣箱をかける

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右下の巣箱はカラス対策に
入り口の周りを鉄板で補強したもの

巣箱を利用する鳥は、もともと樹洞(キツツキが穴を開けた古巣など)に巣を造る種類です。都市部ではシジュウカラ、ヤマガラ、スズメ、ムクドリなどがその代表選手。

木の穴に巣造りする都会の鳥たちは、こういう手ごろな穴のあいた古木がもともと少なかったので、瓦の隙間などに巣を造っていたのですが、マンションや洋風建築が増えたおかげで、それも困難になってきました。つまり、住宅難で困っているというわけです。その上営巣場所の減少が巣をめぐる争いにまで発展して、小鳥たちの世界も大変です。そこで人間がお手伝いをするというわけです。

巣箱は、巣穴の大きさによって、利用する鳥が違ってきます。例えばシジュウカラの場合は2.8センチ以上で2.9センチ未満。これ以上にすると、スズメが侵入してシジュウカラを追い出すことがあるためです。このサイズであれば他にヒガラ、コガラなども利用します。スズメ用の巣箱は別 に用意してあげましょう。取り付け場所は、ネコや蛇が来ないよう、2メートル以上の高さが必要です。

マンションの軒下でも壁側に実のなる木などと共に設置すれば大丈夫です。都会の鳥は人間をカラスよけのガードマンに利用することが多く、商店街の街路樹などにさえ巣を掛けることも多くなっています。目隠し用の樹木の鉢植えなどを置いておけばかなりの率で巣を作ってくれたり巣箱を利用してくれるようです。

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スーパー前の低い街路樹に作られた
ヒヨドリの巣。人間をカラスよけの
ガードマンに利用することが多く、
わざと人通 りの多いところを選ぶよう
になった。ビニル袋や新聞紙なども
使った苦肉の策。でも、内側は
ふかふかでした。さすが

友人の会社のベランダでも、置きっぱなしになっていた植木の部屋側からは丸見えの位 置にヒヨドリが巣を作り、巣立ちまで無事に観察したそうです。

巣箱をかける時期は、野鳥が繁殖期を迎える春の数カ月前、10~12月がいいでしょう。何にも入れずに空っぽのままかけること。

ネコの気配のない庭なら、2メートル程度の高さでも大丈夫。部屋からのぞける位 置において、子育ての様子を観察するのも楽しいでしょう。 材質は杉板などで、かんなをかけていない通 気性のいい板がベスト。特に屋根は小鳥が始めにとまる所なので、ざらざらのままに。 巣シーズンオフに箱を掃除するための扉も忘れないで。

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最近めっきり個体数の減ったスズメ
木の穴に巣造りする都会の鳥たちは、手ごろな
穴のあいた古木がもともと少なかったので、瓦の隙間
などに巣を造っていたのですが、マンションや洋風
建築が増えたおかげで、それも困難になってきました。
つまり、住宅難で困っているというわけです

巣箱の向きはどの方角でもOK。明るく乾いた場所の方が、ゴキブリの巣にならずにすみます。カラスにヒナや卵を取られないよう、屋根があかない工夫や、穴の高さ、補強も大切。雨や風が入らないよう、やや下向き加減にするのもポイント。