雑草との無間地獄の戦いにさよならを

代々木公園で行っている選択的除草の例を見ていくことにしましょう。

選択的除草のポイント。

  • 大勢のボランティアに無理なく参加してもらうために、 見分け方が簡単な帰化植物1種類だけを取り除いてもらう方法を紹介
  • ゲーム感覚で行え、知的興味と達成感が味わえる
  • 将来的ビジョンを共有しながら、作業を進められる
  • 従来の草取りと異なり、徒労感を感じさせることがない

いくら抜いても次の週にはまた同じ種類の雑草がどっさり芽を出して、そのまた次の週にはすっかり元の草ぼうぼうに戻っている。

「アタシのガーデニング人生って、一生雑草取りにに追い立てられ続けるだけなのかしら?」

そんな無力感にさいなまれるのは、もうおしまいにしましょうね。

何を抜いて何を残すか?
寝た子を起こさない草取り作業

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2006/4/24

まず、これを見てもらいましょう。ここは、代々木公園の南側にある人気スポット、「花の小道」周辺の春の様子です。なかなか素敵なグラウンドカバーでしょう?

3畳ぐらいの広さにはびこったヘビイチゴの群落が、林の中のあちこちに広がっています。ニホンミツバチたちの仕事場にもなっているんですよ。

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2003/6/14

小道の別のところでは赤い実もなっています。この実、道行く人を和ませるだけでなく、野鳥たちに人気があるんですよ。

後ろの少し背の高いのは、クサイチゴの芽生え。ラズベリーなんかの交配親だけあって、鳥にだけ食べさせておくのは勿体ないほど美味しく薫り高い実を着けてくれるクサイチゴ。

ヘビイチゴを食べにきた野鳥たちの糞から育ってきたようです。鳥が集まるようになると、その糞から色んな植物が芽生えるようになって、急速に自然回復が進み始めます。

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2007/7/8

これも、別の場所。上から見ると、なかなかの密度のマット状に茂っているのがわかります。
ところで、このグラウンドカバー、僕たちが植えたりして出来たんじゃないんですよ。この林の中にところどころ残っていた小さな株を、草取りのたびに抜かずに残しておいただけなんです。

小径日記を見てみると、メンテナンスの記録から年々草取りの回数が減っていき、ついには「草取り」の項目さえなくなっています。

ひょっとして記入漏れ?とか思って確認の電話をしたら、このところホントに草取りしてないというか、必要なくなっちゃったんだって。

安定的に在来種のグラウンドカバーが発達して、地下に蓄えられている雑草休眠種子の発芽するチャンスが無くなったからなんだね。

ポイントをまとめると。

  • 草取りの時に全部抜かないで、グラウンドカバーになりそうな日本の野生種を残しておく
  • グラウンドカバーが発達すると、ギャップ依存性の雑草種子は発芽しなくなる

あと、もう一つの大事なポイントも書いておこうかな。

公共費が削減されたこと。

おかげで地面を削り取るような(ホント比喩でなくね)草刈りをする業者が活躍する回数が激減したおかげで、グラウンドカバーがこれまでになく良い状態で維持できてるからってのもすごく大きい原因なんです。
丸投げ予算減少とスキルの低い業者の排除が、こんなに環境に優しいなんて。>ボカスカッ!!

実際、数年前まであったサイト(今は見つからないだけかも)に、例えば、水元公園の芝生管理が公費削減のあおりで十分に出来なくなったおかげで、クローバーやスイバ、カタバミやイヌガラシなんかがはびこり始めて、おかげでモンキチョウやベニシジミ、ヤマトシジミやモンシロチョウ、スジグロシロチョウなんかが増えて返って昆虫達には良い環境になってきたってな記述があったんだよね。

ま、これについては後で詳しくまとめることにして、選択的除草に話しを戻しましょうか。

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2002/11/18

2002年6月に花の小道の管理が始まったのは良いのだけれど、余りにも雑草の勢いがすごすぎてどうにもならないので、何とかならないかと言う相談を受けて打ち出したコンセプトが、共存の庭でした。

日本の野生植物と花壇の園芸植物がともに美しく環境を形作っている、自然回復の足がかりになっている、そんな庭造りを考えてみたのでした。

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で、花の小道でさっそく手始めに取りかかったのが、選択的除草というわけ。

当初、ガーデニングは好きというボランティアさんたちにとって、雑草は雑草であって、名もない種々にすぎない存在だったのは仕方のないこと。いきなり、取った方が良い草と残した方が後々の作業を軽減してくれる草があるなんて話しをしても、そもそも見分けが着かないのだ。

それはまぁ、無理からぬ事。

今までは、どんな種類の草が生えていて、どれとどれを抜き取るなんてことを考える習慣もなく、手当たり次第に抜いていたのだからねぇ。

と、いうわけで、小道周辺に一番沢山はびこっていて、しかも見分けが簡単な草だけを抜いてもらうことにした。

第一のターゲットは、上の写真、帰化植物のウラジロチチコグサ。

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2003/3/10

ウラジロチチコグサは、ご覧のように裏側が白いので見分けがとっても簡単です。細長いヘラ型の葉っぱで、表側はツヤのある緑。
見分けが簡単と言っても、様子を見ているとやっぱりビギナーにはちょっと難しそうだったので、何人かのかたまりで行動してもらい、その中の一人に見本を持たせることにしました。それでも自信がないときは呼んでもらうことに。

1時間足らずの間に、小山が出来るほど取れましたよ。

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2004/1/26

なかなか好評だった選択的除草を、テクノホルティーっていう園芸専門学校の学生さんにも体験してもらいました。やっぱり数人のグループに分かれてもらって、この日は寒かったんでやっぱり1時間そこそこで切り上げましたが、それでもかなり広範囲をやっつけることが出来ました。

一見単純作業のようでいて、意外に観察力や分類学のセンスが問われるので、いざ始めてみると皆さんけっこうはまってました。

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さて、それにしても、なんでまたクソ寒い冬のさなかに草取り? 普通なら、草ボウボウでどうしようもなくなる夏とかにやるんでないのかい?とかギモンに思ってませんかA(^_^;

理由は簡単!

春や夏に抜いたのでは手遅れで、ヘタをすると草取り自体が種まきになってしまうからです。この草、地域にもよるけど、代々木公園では3月頃から11月終わり頃まで花を着けてる株が見つかりますからねぇ。

ウラジロチチコグサは、園芸植物で言うなら「秋まき春咲きの多年草」にあたる帰化植物なんですよね。
つまり、花や種子を着ける前にロゼットで冬越ししている苗を抜いてしまえば、次の年からは生えてこないって訳。

暖かくなってからだと、抜くたびに種をまき散らして、返って逆効果だったりするんです。

もちろんこれは、他の帰化植物にもあてはまるのが結構あるんですよ。
例えば、ざっと思いつくままに挙げてみると、

  • ヒメジョオン
  • ハルジオン
  • オオアレチノギク
  • ヒメムカシヨモギ

とまぁダラダラと花を咲かせ続ける、こんな連中です。

もちろん、べつの生長パターンを持っている植物もあるわけで、たとえば「春蒔き夏〜秋咲き多年草」または1年草だったら、花を咲かせる前の初夏までに抜き取ることが大事です。

いくつか例を挙げるなら、

  • アメリカセンダングサ
  • コセンダングサ
  • ヨウシュヤマゴボウ
  • オオオナモミ
  • オオブタクサ
  • ブタクサ

なんて連中です。

ポイントをまとめると。

  • 花を咲かせる前に抜く。
    どうせ抜くなら冬場のロゼットを抜くのが効果的!
  •  春から発芽する連中は、初夏までに抜き取る。
    あんまりムキにならずに、抜きやすい大きさになった時を逃さずに草取り

老眼なのに、無理して小さな芽生えを目の敵にして抜くこともありません。ビッシリ芽が出ても、花を着けるまで大きくなれるのは、ほんの数%〜数十%程度ですから、あわてふためくことはありません。抜きやすい大きさになってから、できれば雨の翌日に抜くのが一番楽ちんですね。

この話題、まだ続きます。